「サッカーが防災・震災復興のためにできること」開催レポート前編はこちら。
藤村様、上田様のお話に続いて、Jクラブの取り組みについて、
川崎フロンターレの鈴木様にお話をお聞きしました。
川崎フロンターレが活動している陸前高田の上長部のスポーツグラウンドは
元日本代表の加藤久さんがプロジェクトリーダーを務められ、
social football COLOがグラウンドとクラブハウスの立ち上げにかかわった、COLOの活動を代表する場所です。
※当日の講演スライドより
震災直後は、津波が押し寄せ、瓦礫や漁船などが打ち上げられていました。
その場所を、陸前高田の人たちと一緒に芝生に覆われたグラウンド作りと
グラウンドに来た方が集まれる場所としてのクラブハウス作りを行いました。
※当日の講演スライドより
この場所の完成にあたっては、TEAM AS ONE募金から防球ネットの設置を支援いただいたり、
2016年に行われた高田スマイルフェスというイベントの会場になり、
川崎フロンターレとベガルタ仙台のトップチーム同士の試合も行われました。
※当日の講演スライドより
そんな前置きをsocial football COLOの津村から説明させていただき、
川崎フロンターレの震災復興・防災の取り組みについてお聞きしました。
【川崎フロンターレによる陸前高田での取り組み】(話者:川崎フロンターレ 鈴木様)
「なぜ、川崎フロンターレが陸前高田での復興支援活動をやっているの?」
ほとんどの方がそう思われると思います。
「津波によって教材が全て流されてしまったので、子どもたちのために教材を提供してもらえないか」
出会いは、陸前高田で小学校の先生を勤めている方から、
知人である川崎市の先生へのこの問い合わせから始まりました。
当時フロンターレは、選手やマスコットキャラクターであるふろん太が登場する算数ドリルが
川崎市内の全小学校6年生向けの教材として使われていました。
川崎フロンターレ算数ドリルについて
http://www.frontale.co.jp/diary/2018/0412.html
その算数ドリルを、陸前高田の子どもたちに届けようという企画が持ち上がり、
2011年6月にクラブとして初めて陸前高田を訪れました。
※当日の上映動画より
同年の9月にはトップチームの選手が陸前高田を訪れ、初めてのサッカー教室を開催します。
また同月に、陸前高田の市民の方を川崎フロンターレの試合に招待する「川崎修学旅行」も実施。
※当日の上映動画より
フロンターレのサポーターが陸前高田の被災地ツアーに参加するなど、
お互いが行き来をするという取り組みが始まり、2018年も継続して実施しています。
そして、2015年には高田フロンターレスマイルシップが締結され、
「支援する、支援される」関係から、「支え合う関係」へと変わります。
※当日の上映動画より
「続けることの大切さは、毎年見つかるし、感じる。ただこれは続けないと感じられなかった。
続けることが何より大事ということを感じています。」
同クラブの中村憲剛選手の言葉が、震災当時から陸前高田に関わってきたクラブの姿勢を象徴しています。
※当日の上映動画より
2.防災
【川崎フロンターレの防災の取り組み】(話者:川崎フロンターレ 鈴木様)
■スタジアムキャンプ■
2015年に、川崎市と一緒に試合後のスタジアムでキャンプをする企画というを実施しました。
スタジアムキャンプという名称で行なっていますが、
企画内容は、防災を学ぶということを目的に置いた企画でした。
たとえば、試合後のスタジアムの照明を完全に消して、電気のない生活を体験してみる。
区役所の防災課の方から、災害に対して何を備えるべきか、災害が起こったら何をすべきか、などお話をいただきました。
このような企画に対して、50名の枠に700名の応募があるというとても盛況なイベントとなりました。
サッカーやJクラブの持つパワーを非常に感じる企画でした。
■防災かるた■
スタジアムキャンプ以外の取り組みとして、ご紹介したいのが防災かるたです。
読み札、内容が防災に関することで作られたかるたです。
たとえば、
あ:危ないよ ブラブラ電線 触らない
い:家が壊れた そんな時こそ 避難所へ
う:梅が咲く 御幸公園 避難場所
※当日の講演スライドより
などなど。
「う」の読み札に出てくる御幸公園(みゆきこうえん)というのは、川崎市幸区に実際にある公園です。
かるたを楽しむだけで、子どもたちは「御幸公園は避難場所なんだ」と自然と覚えます。
この防災かるたを使った活動を、幸区内の小学校で行なって、防災意識の向上に役立てています。
※当日の講演スライドより
※写真は陸前高田での活動風景
【サッカー防災®︎ディフェンス・アクション】(話者:social football COLO 津村)
サッカー防災と聞いても、何をするのかよくわからない、という方が大多数だと思います。
例えば、サッカーのパス練習の際、味方にパスを出すときに「防災備蓄品」を言わないとパスができない。
パスの交換本数が多い、つまりたくさんの防災備蓄品を言えたチームが勝つ、というシンプルなゲームです。
そんなディフェンス・アクションは、次のことを目指して考え出されました。
・より多くの方、特に若い世代、が防災に興味を持つ
・もっと楽しく防災を知るきっかけを作りたい
・チームで取り組むことによって、共助のきっかけづくりも担う
地域やマンションで行われる防災訓練は、
若い世代の方がなかなか参加しない(参加しづらい)ことや、
災害時に必要となる共助の関係を築きづらい、ということがあります。
現状行われている防災訓練が対応できていないところをカバーすることで、
全ての人にとって大切な防災を知ってもらう、考えていただく機会を作っています。
実際に、文京区や渋谷区の防災イベントでディフェンス・アクションを取り入れていただいたり、
主催の防災イベントで、多くのJクラブの選手たちにもご協力いただいています。
川崎フロンターレの取り組みも、ディフェンス・アクションも
サッカーの持つ力を存分に活かして、防災を知る・興味を持つ・学ぶことにチャレンジしています。
参加者の方からは
「防災を、サッカーという新しい視点で見れた。」
「サッカーがきっかけで講演に来たが、防災にも自分の事業が活かせそうだと思った。」
という感想をいただき、改めてサッカー×防災の可能性を感じた講演となりました。
ご参加いただいた皆様、ご登壇いただいた皆様、誠にありがとうございました。