2016.2.8/social football SESSION vol.08:レポート(1st)

『 互いの強みを生かし、支え合える関係が長続きの秘訣 』


コンセプトを「サッカー×ビジネス×社会貢献」とし、「サッカーを通じた社会貢献の可能性を追求する」参加者同士の対話型勉強会。それがsocial football SESSIONです。

第8回目となった今回は、東日本大震災発生から5年に際して、サッカーをはじめ、さまざまな切り口でユニークな取り組みを東北にて行っている3名のゲストをお招きしました。

以前、陸前高田スタディツアーレポートでもお伝えした岩手県陸前高田市と川崎フロンターレの友好協定「高田フロンターレスマイルシップ」の立役者である天野春果さん。宮城県南三陸町に拠点を置き、東日本大震災の復興支援を行う復興応援団の理事を務めている佐藤秀一さん。そして、福島県郡山市を中心に子どもたちの遊びと学びの環境をつくる株式会社Plainnovation代表の菅家元志さん。

以上、東北震災復興のキーパーソンともいえるお三方に「復興支援のいまとこれから」について伺うと共に、実際に私たちにできることは何かを考えました。SESSION後に行われるゲスト参加の懇親会も含め、当日の様子を2回にわけてお伝えします!


■岩手県陸前高田市での「川崎フロンターレ」の取り組み

川崎フロンターレ サッカー事業部・プロモーション部 部長 天野春果さん

川崎フロンターレ サッカー事業部・プロモーション部 部長 天野春果さん

川崎フロンターレの広報としてご活躍する天野さんは、ご自身の活動に対して「本当に売名行為ではないのか、実際に被災もしていないのに活動することはただのエゴではないか。そんなことが頭を占めた時期があった」といいます。その転機となったのは、「被災していなくても、動ける人が動くことが大切。フロンターレは、フロンターレができることをすればいい」という気づきでした。

支援といえば、支える側と支えられる側という一方通行的な関係性になってしまう。そこに問題を感じた天野さんは、「フロンターレの強みを生かした活動(メディア露出等)とその継続のためには、支え合う関係性(相互支援)が必要だと思った」といいます。そして、「フロンターレとサポーターのように“互いに得るもののある関係”を陸前高田でもつくればいいのだ」と気づいたとのことです。

そこで思いついたのは、「陸前高田を生かす」ということ。これまで“被災地だから買う”という印象の強かった陸前高田の物産は、支援という特別な理由がなくとも美味しいのだからと「陸前高田ランド」というイベントを開催し、結果は大成功。互いにとってよい機会を創出できたと確かな手応えを感じたとのことです。

 

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天野さん「震災直後の募金の総額は日が経つにつれ減り、復興支援の継続の難しさを実感。」

また、天野さんは、「同じことをするにしても、そのプロセスで“共に作り上げる”ということが大切。僕たちがセットアップして出来上がったものを与えるのはちがう。みんなを当事者にさせることが大切だ」といいます。

そんな天野さんは、物産関係者以外の市民ともなにか“共に汗をかき、共につくり上げる”ことはできないかと考え、今年の7月3日に行われる「高田スマイルフェス」を企画しました。高田スマイルフェスが行われる場所は、COLO CUPの寄付先のひとつである「陸前高田グラウンド・クラブハウスプロジェクト」のグラウンドです。(COLOとのつながりの詳細はこちら

2013年に加藤久さんのこの活動を知り、想いに感化され、ここでの試合の実現を夢見た天野さん。陸前高田のサッカー協会の賛同を得て、フロンターレの選手を巻き込み、反対派の意見を変えさせ、ついに今夏、夢のようだと言っていたベガルタ仙台とのスマイルドリームマッチが実現されようとしています。グラウンド環境の整備などを通じてその夢の実現の一助となれることを嬉しく思います。


■宮城県南三陸町での「復興応援団」の取り組み

一般社団法人復興応援団 理事 兼マーケティングディレクター 佐藤秀一さん

一般社団法人復興応援団 理事 兼マーケティングディレクター 佐藤秀一さん

復興応援団の佐藤さんは、「被災地との関係は、もう“支援する・される”という関係ではなくなった。“被災者”と呼ばれることに違和感を抱く被災地の方々もいる。これからは、被災地がどういった価値を提供できるのかということに焦点を当て、win-winの関係性を築けるようにしたい」といいます。そして、「これまで多くの人々を被災地に送ってきたが、そのツアーの目的は“ボランティア”から“観光”に変わり、いかに南三陸という町の価値を高め、その価値を発信するかについて考えている」とのことです。

復興応援団は、復興の段階に合わせて「避難所支援→仮設住宅支援→地域支援」と支援の幅を広げてきています。現在は、仕事をも流され失った被災地だからこそ学べる本質的な仕事観に価値を見出し、学生のインターンシップや企業の新人研修などのツアーをおこなったり、その地域のファンをつくる「ファンコミュニティづくり」をしたりと形を変えながらも被災地の自立のサポートと外部との双方向的な関係性づくりを継続しています。

また、復興応援団は、COLOと同じくHITOTOWA INC.が主宰するCommunity Crossing Japanとともに“共助の防災減災研修を通じて「よき避難者」を育てる”事業を行っています。「同じことを繰り返してほしくない」という被災地の方々の想いと「つながりの希薄化」が著しい首都圏の危険性。その問題を解決したいという想いに共感し、COLOはCOLO CUPにおける応援団体として復興応援団の活動を支援しています。


■福島県郡山市での「株式会社Plainnovation」の取り組み

株式会社Plainovation代表およびNPO法人郡山ペップ子育てネットワーク企画部長 菅家元志さん

株式会社Plainovation代表およびNPO法人郡山ペップ子育てネットワーク企画部長 菅家元志さん

福島出身若手起業家の菅家さんは、福島の子どもと震災直後に多くかかわることで「“遊び”というもののかけがえのなさ」を強く感じたといいます。

そして、「子どもにとっては、遊ぶことが生きること。当たり前が奪われたというセンチメンタルな寂しさだけでなく、友達と外で遊べないことなどによる心身の成長機会の損失があり、それを埋めるための活動をしなければならない」という想いから、PEP Kids Koriyamaという施設の運営等をおこなっています。COLOは、その菅家さんの想いに共感し、COLO CUPにおける応援団体として活動を支援しています。(最新の視察レポートはこちら

また、菅家さんは、「福島には大変なことが起きたけれど、とても有り難いことも起きている」といいます。福島の抱える課題を解決することで、日本全国の課題の解決に近づくと考えるさまざまな分野の専門家や企業により、現在の福島には多くの知識や技術、そしてノウハウが集結しているとのことです。菅家さんは、約5年という月日を経て関心の薄れてきた現状を変えるべく、「それらを価値として提供することで結果的に福島や被災地の遊び場不足問題、そして子どもの健康問題に関心を向けてもらう」ようにコミュニケーションのあり方を変え、PEP Kids School というサービスにも力を入れています。

 

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ゲスト3名のプレゼンテーションを終え、参加者同士で感想の共有などが行われます。

多くの刺激を受けたようで、みなさん真剣な表情で時間ギリギリまで語り合っていました。しばしの休憩をはさんだら、荒より参加者を代表して質疑応答が行われます。質疑応答と懇親会の様子は、第2回にて!


写真:五月女郁弥
文:石川涼子