2013.9.4 / COLO CUP Player’s REPORT 01 : 加藤遼也


みなさまこんにちは。COLO事務局です。

2013年9月7日のCOLO CUP vol.02を控え、事務局はその準備に慌ただしい日々を送っています。そしてこのところ天候が不安定で当日も心配です。フットサルは多少の雨でもプレイできるけれど、ぜひとも快晴のなかで思いっきりボールを蹴りたいところです。

さて、そんな今日は、前回大会に参加したひとりの青年から届いた、とても嬉しい報せをみなさまにご紹介させていただきます。

『フットボールを通じ、人と人、人と社会をつなぐこと』を使命として活動している我々”COLO”にとっては、今後につながるひとつの良い事例となりそうです。

是非ご一読ください。

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はじめまして、加藤遼也と申します。

僕は今、streetfootballworld というドイツ母体のNPOに所属し、サッカーを通じて世界各地の社会問題を改善するNPOの支援を仕事にしています。第一回COLO CUPに参加した縁で、加藤久さんとつながりができ、7月19、20日の2日間、久さんと2人で被災地を訪れました。

僕の所属するstreetfootballworldという団体は、FIFA、UEFAそして世界各地のNPOと提携し、サッカーをツールとして活用した教育、貧困、就職、福祉、和平、ジェンダーなどの社会課題の解決に取組んでいます。現在は、世界61カ国の85団体と提携しながら、約80万人の子どもたちを支援する一方で、2014年以降は、日本での事業展開も計画しています。その、日本における計画の1つのテーマがそう、被災地の復興支援です。震災直後から「現場目線」で精力的に活動し続ける久さんは、僕が誰よりもお会いしたい人でした。

そんな想いもあって、COLO CUP Vol.1から数日後、あらためて久さんとお会いして事業の相談をしたところ、「一緒に被災地へ行こう!」と誘って頂き、今回の訪問が実現しました。以下に、そのときのことをまとめてみます。

もし被災地の為に使えるお金があったとして何に使いますか。

復興支援といっても、教育、住宅、雇用促進、サッカーの環境整備など様々な分野があります。お金に限ったことではありませんが、極端に言えば何に使おうと個人の自由です。ただ、願わくば現場の声を聞いて考えて欲しい。本当に支援を必要としているところへ、本当に必要としている支援を届けるために……。

それが、今回のレポートで皆さんにお伝えしたいことであり、現状を知るために久さんと東北を訪問した目的でもあります。

今回の一ノ関、気仙沼、陸前高田、遠野、大槌、釜石、大船渡、北上、300km以上車を走らせ、現場を知り尽くした久さんの案内で、「復興とサッカー」に関わる現場を見てまわりました。この2日間で見たものは全体のわずか一部に過ぎませんが、まだまだヒト・モノ・カネの支援を必要としている状況にありました。

被災地の現状を伝えるきっかけとして、道中で心に刺さった現場の声を3つ振り返りたいと思います。


1.「被災状況、復興状況が違うから、ただ“被災地”として一括りにはできない」

IMG_9607 陸前高田市立第一中学校

これが、現場で久さんから受け取った最初のメッセージです。

僕らは、一ノ関から気仙沼、陸前高田市へと入りました。つまり、都市部から海に近く津波被害が大きい沿岸部の順に宮城・岩手を見て周ったわけですが、このルートがメッセージそのものでした。車窓の景色は、住宅の損傷など比較的物理被害の少ない都市部から津波により街が崩壊し瓦礫の山や家々の土台から生える雑草が続く景色に変化します。同じように”被災地”と言われる域内においても被災状況、復興状況の違いに気づきます。

震災から2年半、今本当に支援を必要している場所はどこなのか?そして、何を必要としているのか?

あらためて考える必要があると僕は感じました。と同時に、それが僕たち個人個人がまずできることだと思っています。


2.「芝生グランドに着くと、子どもたちは、まず思いっきりボールを蹴るんです」

気仙小学校仮設グランド

そう話してくれたのは、高田市サッカー協会の方でした。

芝生の有無に関わらず、現地には“思いっきりボール蹴る”環境が整っていません。ご存知の通り、多くの小中学校のグランドや公共の運動施設は仮設住宅に使用されています。仮に運動場所があったとしてもそこまでのアクセスや、管理運営の不備などいわば運動を取り巻くハード、ソフト両面に課題を抱えています。そんな中、参考になる1つのGood caseが、陸前高田市上長部地区でNPO法人 遠野まごころネットと地元住民による気仙小学校仮設グランドづくりです。

ここでは、地元の大人と子どもが自分たちの手で芝を植え、管理運営まで担っています。震災後、津波によって流された住宅の跡地をならして、土のグランドを整えた後、2012年6月頃からポット苗を定植し、 9月に晴れて芝生のグランド開きが行われました。そして、昨年から気仙小学校の授業や行事を中心に、その地区の人たちが利用できるようになっています。

地域住民を巻き込み、住民が主体となって作り・管理運営していく方法はハード・ソフト面の課題を解決しやすいだけでなく、地域の持続的発展の観点からも理想であり、この芝生グランドつくりは他地域のロールモデルになるのではないでしょうか。

「芝生グランドに着くと、子どもたちはまず思いっきりボールを蹴るんです。その次は寝転ぶ。芝生でサッカーするとプロに近づいたと感じるみたいで、良いプレイをするんです」という言葉に刺激を受けて、僕はこっそり芝生の勉強を始めています。


3.「大人も我慢してるんだよ」

慶応大OBチーム

シニアサッカー交流会の会場を後にし、車中で久さんが呟いたその言葉がぐさりと心に刺さりました。

2日目の夕方、高田市サッカー協会と慶応大OBのシニアサッカー交流会を訪れました。 会場の陸前高田市立第一中学仮設グランドでは、40~60歳代の約60名(3チーム)が 快晴の中、とても生き生きとボールを蹴っていました。得点を決めれば歓声が、チャンスをミスすれば大笑いが、グランド内外から聞こえてきます。大人が子ども以上に無垢にサッカーを楽しんでいる姿は、見ている皆を、幸せな気持ちにさせてくれました。

震災直後からの現場を知る久さんは、伸び伸びプレイする大人たちを見て、ホッと胸を撫で下ろしたと共に反省の念を抱いたようでした。

「もっと早くサッカーする機会つくれば良かったなぁ。大人も我慢してるんだよ」と。

大人たちがサッカーをすることは、ごく普通の行為なのかもしれませんが、陸前高田市をはじめ震災被害の大きい地域で状況は異なります。仮設住宅の敷地では子どもでさえ大人に気をつかい、ボール遊びを控えるようになったと言われていますが、大人であれば尚更、公衆の目に触れてサッカーをすることが難しかったと想像に難くありません。大人は犠牲と理解を求められると言えばそれまでですが、大人が運営側ではなく、スポーツやアートなど、あらゆる文化活動に参加できる機会を作ることは、現地でも喜ばれると感じました。上述した気仙小学校仮設グランドでは、すでに都市対抗のシニアサッカー大会が計画されています。

他にもお伝えしたいことはありますが、
まずは3 つの声が現状について考える機会になれ ば幸いです。

サッカーは人と社会を変える力があると信じていますが、サッカーに全てができるわけではなく、他分野との連携が大切になります。僕自身これまで南アフリカとアメリカの貧しい地域で働き、それら現場でサッカーよりも食・住宅の生活インフラを優先した方がいいのでは?と考えることがありました。

まだ僕も、納得できる答えを見つけられていませんが、今回の東北遠征を通じて、サッカーはあらゆる人の敬意と理解のもとに成り立っていて、僕らはその人たちへの感謝を忘れてはいけない、そう強く認識しました。

最後になりましたが、COLO の皆さん、そして2 日間にわたり東北を案内して頂いた加藤久さんに、心より御礼申し上げます。

It takes a team to win a game.
「困難を乗り越え、夢を実現するためにひとつのチームになろう」

text & Photo:加藤遼也


加藤 久(Hisashi Kato)
Jリーグ発足前から日本サッカーを支え、日本代表の主将も努める。東日本大震災の復興支援活動に熱心に取り組んでいる。COLO CUP vol.01ではゲストコーチとして参加。
加藤 久さんの活動の記事 >>> Number Webhttp://number.bunshun.jp/articles/-/349040


加藤遼也(Ryoya Kato)
1983年愛知県生まれ。南山大学スペイン・ラテンアメリカ学科卒。
サッカーを活用して社会開発に取組むstreetfootballworldに魅了され一念発起。スペイン、南アフリカ、米国を経て、streetfootballworldの公式スタッフとして、日本展開の事業計画を担当中。
Facebook: http://www.facebook.com/ryoya.kato.12

 

以上が、COLO事務局から、加藤遼也さんにお願いをして、まとめていただいた、COLOCUPのそれからを綴るレポートです。この場を借りて、快く引き受けてくれた加藤遼也さん、第一回COLO CUPのゲストコーチをつとめてくださった、加藤 久さんには、事務局一同、深く御礼申し上げます。お二人の活動に、COLOもいつかどこかでご一緒できたら……。

こういった、素敵な出会いが生まれ、その後につながったということは、事務局として大変嬉しく思います。これからどんな、出会いが生まれるのか、今後のCOLO CUPも楽しみです。

そして、みなさんにもよりよい、つながりができますよう、COLO CUP vol.02の準備に戻ります!