「防災、やっぱりめっちゃ大事やん!」て思うからほんまに危機感もってるんよね【COLO運営メンバー対談 前編】
2013年3月11日にスタートした、『social football COLO』。この3月で発足から7年、そして東日本大震災の発生からは9年を迎えます。震災から10年の節目を前に、これまでの『social football COLO』の取り組みをふりかえり、未来へとつなげる対談の機会を設けました。
前編としてまず話を聞いたのは、HITOTOWA INC.でソーシャルフットボール事業(social football COLO)の事業執行役員を務める津村 翔士。聞き手は同じくHITOTOWA INC.の原田稜がつとめます。
防災の勉強って、まだまだ楽しくできるんちゃう?
原田:社内インタビューということで何か変な感じもしますが。僕の入社からちょうど1年ということもあって、あえて社内対談を公開することにしました(笑)。
津村:なんか緊張してる?
原田:はい、やっぱり変な感じですね(笑)。気をとりなおして進めます! まずつむさんに聞きたいのは、『social football COLO』のメイン事業である『サッカー防災®「ディフェンス・アクション」』について。これはサッカー・フットサルを楽しみながら防災減災を体感するワークショップですが、特に2019年は行政からの依頼が増えましたね。
津村:平均すると月に2回以上は「ディフェンス・アクション」を開催できたよね。行政の方との協働やと「一緒に防災減災を広めていきましょう」という問題意識が共通しているから、めちゃ勉強になる。こちらの意見も真摯に受けとめていただけるし、ありがたいなといつも思ってます。
原田:「ディフェンス・アクション」の魅力ってどんなところにあると思いますか?
津村:そもそも、防災減災について地域で熱心に活動してる人はたくさんいるんやけど、「周りの人がついてきてくれない」ケースが多いんちゃうかなという問題意識があって。
でも災害は「みんなが同時に」被災するもの。つまり自治会や行政職員の方々がいくら防災に精通していても、その地域住民の防災減災レベルが高くないと、自助も共助もできないんよね。
だから「ディフェンス・アクション」を通じて、防災減災への興味関心を広げることが大事だと思って、そんな思いが伝わるように意識して取り組んでます。
原田:サッカーを通じた防災ワークショップは、防災に対する興味の入り口になりますよね。ただ、楽しいのは大事ですが、防災減災の学びにもならないといけない。サッカーの楽しさと防災減災の学びのバランスについては、どのように考えていますか?
津村:「楽しさと学びは矛盾しない」と思ってて。例えば、これまでのアンケートでも、防災の学びがあったと答える方は100%に近いんよね。そういう意味では、『サッカー防災®』のアプローチは間違っていないと思ってる。むしろ、もっと楽しくしたい。もっと楽しくて、もっと学びがある場を目指せるんちゃうかなと日々思ってます。
憧れの選手がやってたら、自分もやろってなるやん
原田:これまで、多くの Jリーグクラブやサッカー選手が関わってくれていますよね。その顔ぶれに、入社していちばんびっくりしました。ラッキーに感じています(笑)。
津村:ほんまよね。有名な選手が真剣に楽しんでくれているから、ありがたい。やっぱり同じことを言っても、サッカー選手やJクラブの方のほうが説得力はある。ぼくらでは足りないことを、補っていただいている。
2018年に関西を襲った台風21号で、イベントのゲストに来てくださった選手のマンションが浸水の被害にあってしまったらしいんよね。でもその方は、そういうことがあったから、「脱出用にゴムボートを購入した」とか「備蓄品を買い足した」とか、危機感を行動に移したということをイベントで話してくれた。
「そんなん、当たり前やん!」ってことやねんけど、この当たり前がなかなかできなくて、被害が広がっていることも多いと思う。でもテレビで観てた憧れの選手がちゃんと防災に取り組んでいる、と参加者が知ると、「こんなすごい人でもやってるんやから、自分たちもちゃんとやろう」という気持ちになってくれる。そこはやっぱり僕らにはない言葉の強さやなと。
それにJクラブやサッカー選手にとっては、サッカーを競技以外の面で活用できる、教育的な手段として捉え直してもらう機会になっているみたいで。「サッカーで防災を伝えられたり、学んだりもできるんですね!」って言ってもらえる。それでお礼を言われたりするからさらに嬉しいよね。
原田:行政や企業とも協働していて、それも入社後に驚きました。「サッカー防災について、こんなに真剣に議論するんだ!」って(笑)。
津村:見た目は楽しい防災イベントやけど、裏側は真剣やからね(笑)。特に行政で防災に携わっている方々は、「どうやって幅広い世代に防災を伝えて行くか?」ということを真剣に考えてる。その点、「ディフェンス・アクション」は幅広い世代、特に若い世代に対して訴えるにはとても有効だと言ってくれる人が多い。
それに、行政の方と取り組める価値は、「日常に入り込んでいく可能性がある」ことにあると思っていて。たとえば防災教育の面で、学校の授業や部活、避難訓練に取り入れてもらうとか。行政も災害対応の当事者なので、僕らの持つコンテンツを使いながら、相互補完しあえる協働体になれるやろうなと思ってるんよね。
一方で、新しいアイデアや発信力のある企業との協働もまた刺激的。ある大企業の労働組合とは、組合員の方とそのご家族を対象に、昨年の3月に「ディフェンス・アクション」を首都圏で開催して。さらに今年の2月には福岡の組合員の方を対象にも実施できた。南海トラフ大地震も迫っているので、今後は東海エリアや関西エリアでも実施していきたい。そんな全国一周するような企画をご一緒させてもらえて本当に光栄やなと。
『social football COLO』は、「災害で誰も亡くならない街をつくる」をゴールに掲げているから。そのためにいろんな人たちと連携しながら、自分たちも成長して、ちょっとでもいい災害への備えを作っていきたい。
正直いうと、防災に興味なんてなかった
原田:ところで、つむさんが防災に熱心になったきっかけはなんですか?
津村:正直いうと、HITOTOWA に入社する前は関心低かったよ。関西出身やから、阪神淡路大震災の発生のときは神戸にいたし、就職後の転勤で熊本地震の発生のときは福岡にいた。でも「自分ごと」ではなかったんよね。阪神淡路大震災のときも、自分や家族、親戚にはそれほど大きな被害は出なかったから。
でも、この『social football COLO』、『サッカー防災®』を推進するようになって、被災した方々のお話を聞かせてもらう機会に恵まれて。一番心に残っているのは、仙台で聞いたある自治会長の話。3月11日に津波警報が発令されて、いままで自治会で行なってきた避難訓練通りに、各戸に逃げるように声をかけて回ったんやって。でもそのとき、「前の津波警報のときも何もなかったから逃げない」という住民がいて。結局その方は津波に流されて亡くなってしまった。
一方で、「自治会長が声かけに来てくれて逃げないわけにはいかんよなぁ」と、一緒に逃げてくれた住民もいて。そして、その人は津波を免れて助かった。その話を聞いて、防災に取り組んだり、その意識を高く持ったりすることで、悲惨な災害からでも救える命がたくさんあるんや、と感じて。
いままで自分の身の回りに被害が少なかったことは 、偶然であり奇跡だった。でも、取り組み方によっては、ちゃんと生き延びることができるんやなと。「防災、やっぱりめっちゃ大事やん!」って。
だからいまは、「もともと興味がなかった自分だからこそできる防災減災の伝え方」があると思ってる。そんな自分だからこそ「ディフェンス・アクション」を受けてくれる方を大切にしていきたい。
原田:いつも「ディフェンス・アクション」のとき、楽しそうですもんね。今後の展望についても聞かせてください。
津村:南海トラフ大地震と首都直下地震が起こる前に、前向きな関心を育てていきたい。めっちゃ危機感を持ってる。はよいろんな人に伝えないと、って。それに風水害や感染症予防に対する「ディフェンス・アクション」も開発していきたい。その点は特に、りょう(原田)に期待してるから、頼んだで!
原田:僕も静岡出身で、南海トラフ大地震は「自分ごと」です。地元の家族や友達のためにもがんばりたいと思っています。はい、引き続きがんばりましょう!
後編では、HITOTOWA代表の荒に『social football COLO』立ち上げの背景から、今後の展望までを聞いていきます。ぜひあわせてご覧ください。