2015.9.11-12/social football COLO 陸前高田スタディツアー:レポート(3rd)
第1回、第2回とお伝えしてきた1泊2日の陸前高田スタディツアーも終わりが近づいてきました。
旧市街地を訪れ、市長のお話を伺った1日目。市民の方々が運営するカフェを訪れ、グラウンドの視察とボランティア活動を行った2日目前半。
最終回となる第3回では、陸前高田スポーツグラウンドプロジェクトの現地コーディネーターとして尽力されている武蔵和敏さんのお話を中心に、ツアー参加者であるコスモスモアのみなさんの感想もお届けいたします!
■ら~めん武蔵
グラウンドで体を動かしたあとは、やはりお腹が空きますよね。ということで、イオン陸前高田店にある「ら~めん武蔵」にてお昼ごはんをいただきました。
こちらの店長の武蔵和敏さんには、先に述べたとおり、グラウンドプロジェクトの現地コーディネーターとしてご尽力いただいています。
一番人気だったのは肉厚なチャーシューが贅沢に3枚(!)も乗ったチャーシュー麺。他のメニューもおいしいと大好評でした。
ちょうど同じ頃に、昨日ご一緒した川崎フロンターレのみなさんもご来店し、店内はますます活気に溢れます。復興にかかわるつながりが、武蔵さんという「人」を通じてら~めん武蔵という「場」に集まる。“人と場”両方の大切さを改めて実感する時間となりました。
■武蔵和敏さんの講話
場所は変わり、箱根山テラスにて武蔵和敏さんから「市民・企業家から見た陸前高田の復興」についてお話を伺います。
箱根山テラスは、「木と人をいかしてそのつながりを育んでいくこと」をテーマに陸前高田にオープンした宿泊・滞在施設です。復興支援という文脈だけでなく、「陸前高田は素敵な場所だからまた来たい」と言われるようにという想いで運営されています。
見晴らしもよく、心地よい風の吹くきもちのいい空間。「プライベートでまた訪れたい」という声がたくさんあがりました。
さて、今回お話を伺った武蔵和敏さんは、2015年3月31日に事業を終了した「陸前高田市仮設住宅連絡会」の副会長をされていました。現在は、広田湾を見渡せる高台にご自宅を再建し、そちらに住んでいらっしゃいます。
「一番最初に入った仮設住宅は、本当にひどかった。アリの大群に襲われたり、ヘビも出たりして気の休まることのないものでした。」
震災前に建設会社に勤務していた武蔵さん。当初は、一言で仮設住宅といえども、住宅そのものにすら場所によって大きな差が出ていたといいます。「場所を選ぶことも可能ではあったが、当時はとにかく避難所から仮設住宅に移動したい人が多く(特に大型避難所)、場所を気にする人はあまりいなかった」とのことです。
笑顔がすてきな武蔵和敏さん。さまざまな活動をされる中、2011年から2014年までの3年間で陸前高田市打越仮設住宅自治会長も務めていました。
「四畳半の仮設暮らしに慣れてしまっていて、各部屋ひとりずつになったときは意味もなく不安になりました。たいして広くもないはずなのに、八畳が本当に広く感じるんです。」
震災から数年たった今、仮設住宅における問題は、暮らしやすさや機能の面だけではなくなっています。
陸前高田の場合は高台をつくる計画を市で進めていますが、その整備が遅れてしまっていることで自宅再建の目途がつかない、または、ご高齢の方などが経済的な理由で仮設から出ることを諦めてしまう、仮設住宅から出たはいいけれど、コミュニティがなくなり、孤独を感じたり、鬱になってしまう可能性があったりなど“これから”に対する問題が山積しています。
「陸前高田は数年後、“かなりの税金を使ってつくられたけれど失敗した復興の街”と言われるようになっているかもしれないという懸念を市民は持っています。」
武蔵さんのその言葉を聞いて衝撃を受け、また、被災した市民としての率直な意見を述べられている印象を受けました。そして、被災地における子どもの存在の大きさは市長と同様のお考えのようです。
「被災から一ヶ月たったとき、子どもたちに作文を書いてもらいました。そこには“自分が陸前高田をよくしていくんだ”という前向きなきもちが多く書かれていて、小学校高学年にもなるともうひとりの大人に見える。大人が思うよりもずっと頼りがいのある存在です。」
武蔵さんから「サッカーチームをつくって試合をしに来てください!」とお願いされるコスモスモアのみなさん。次回までの宿題ができました。
さいごに、武蔵さんは「自分の身を守ることと家族を守ることを徹底していただきたい」と念を押します。この1泊2日の間でさまざまな方とお話する機会がありましたが、みなさん共通しておっしゃることは「同じことは繰り返してほしくない。自分たちの経験をいかして、しっかり防災をしてもらいたい」ということです。
こうして現地の声を届けることができるということ。直接的にも間接的にも学ぶ機会をつくり、関係構築のお手伝いができるということ。わずかではありますが、これからもCOLOのできることをひとつひとつ実行に移していきたいと思いを新たにしました。
■さいごに
「毎週とは言いませんが、陸前高田の成長を感じられる間隔で来ていただきたい。そして、2年後に私が新たにつくる居酒屋で飲みましょう!」と明るい笑顔で見送ってくださった武蔵さん。あたたかなお見送りに旅の疲れも消えるようでした。
軽やかな気分はそのままに、この2日間で感じたことの共有をひとりひとり行いながら一ノ関駅に向かいます。半数以上が震災後はじめての被災地訪問となるなかで、どれだけのことを感じ、学べたのか――そこで出た感想をいくつかピックアップしたいと思います!
「テレビでは伝わらない部分がたくさん伝わった。百聞は一見に如かずだと感じる。帰ったら情報をみんなに共有したい。」
「震災があったからではなくて、陸前高田そのもののいいところをたくさん知れたから、また観光としてでも遊びに来たい。」
「夜にお酒を飲んでいいのかなと思うこともあったけど、これもなにかしらの復興支援だとわかってよかった。またグラウンドでサッカーをしに来たい。」
ひとりひとりの感想への拍手と笑顔に包まれる車内。本当に多くのことを感じ取っていただけたようです。
「ひとりで来る場合では聞けないことを聞けたり、行けないところに行けたりしたことがとてもよい経験になった。この経験を無駄にしないようにしたい。」
「市長と市民と、ある意味では対比的な話を聞くことができてよかった。きっと今回聞けていない意見をもつ人もいるのだと思う。」
「過去をいかすために、まずは情報と想いの共有が必要だと感じた。実際に震災が発生する前にこのように考えられる場を設けることはとても有意義だと感じた。もっとこういう機会をつくっていきたい。」
そして、その他にも現地に赴くことやそこで感じたことを周りに伝えることの大切さ、同じことを繰り返させないために想いや経験を赤裸々に語ってくれる陸前高田の方々への感謝などが多く共有されました。
参加されたコスモスモアのみなさんを含め、様々な方々のご協力のおかげで、今回のツアーの目的であった“陸前高田の現状と未来を学び、震災復興のこれからを考える”ことを達成できたと感じています。この場をお借りしてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。
そして、震災復興ツアーを行いたい企業・団体を募集しています。
COLOは、social footballを通じて東北に寄り添い、より多くのと人と学びながら共に進んで行ける存在であり続けます。
ご拝読ありがとうございました!
文:石川涼子
写真:石川涼子